
こんにちは。
カナダ在住17年、2児の母。日本で小学校教師として11年間勤務し、現在は補習授業校教師、継承語教育アドバイザーとして活動している理恵です。

このコラムでは、「子どもに日本語を続けてほしい。でも、親子バトルにはしたくない」そんな海外子育て中のご家庭に向けて、細く、長く、日本語が続いていく「おうち日本語」の考え方と、毎日の暮らしの中で実践できるヒントをお届けしています。
前回は、「日本語が、子どもの未来の選択肢を増やす」というお話をお届けしました。
今回は、「おうち日本語を続けるための7つの土台」の5つ目。
漢字の壁を越える鍵は、語彙力
というお話です。
多くの海外子育て家庭が悩む「漢字の壁」を、今回は語彙力という視点から考えていきます。

1.漢字の前に「言葉」を知っていますか?
漢字がなかなか覚えられない。何度書いても、すぐに忘れてしまう。そんなとき、つい「もっと練習させなくては」と思いますよね。
けれど、漢字につまずく理由は、練習量だけではありません。
その漢字で表される言葉を、子どもが日本語の言葉として知っているか。
ここが、とても大切です。
2.「一つ」から「十」まで数えられる?
例えば、物を数えるとき。
「一つ、二つ、三つ……」
お子さんは、その先の「四つ、五つ、六つ、七つ、八つ、九つ、十(とお)」まで自然に言えるでしょうか。
家庭では、「1個ちょうだい」「クッキーを2個食べた」という言い方が多く、「一つ、二つ」と数える機会は意外と少ないかもしれません。
人を数える言葉も同じです。「一人」「二人」という言葉を聞いたことがあっても、それが人を数える言葉だとつながっていなければ、「いちにん」「ににん」と読んでしまうことがあります。
これは、漢字が苦手だからではありません。その言葉に出会った経験が、まだ少ないだけなのです。

3.知らない言葉と漢字を同時に覚える大変さ
子どもがすでに「ひとり」「ふたり」という言葉を知っていれば、「知っている言葉を、漢字ではこう書くんだ」と理解できます。
ところが、言葉そのものを知らなければ、新しい言葉と新しい漢字を同時に覚えなくてはなりません。これでは、子どもにとって二重の負担になります。
聞いたことがある。
意味を知っている。
使ったことがある。
この積み重ねが、漢字を覚える土台になります。
4.いつもの言葉に一つ添える
家庭で毎日、日本語を使っていても、「ご飯だよ」「本を読もう」「学校どうだった?」だけでは、出会える言葉が限られてしまいます。
「ご飯だよ」に「朝食」。「本を読む」に「読書」。「声に出して読む」に「音読」。いつもの言葉に、別の言い方を一つ添えてみましょう。
「朝ご飯できたよ。今日の朝食はおにぎりだよ」
「本を声に出して読む?音読してみる?」
家庭で毎日、日本語を使っていても、「ご飯だよ」「本を読もう」「学校どうだった?」だけでは、出会える言葉が限られてしまいます。
「ご飯だよ」に「朝食」。「本を読む」に「読書」。「声に出して読む」に「音読」。いつもの言葉に、別の言い方を一つ添えてみましょう。
「朝ご飯できたよ。今日の朝食はおにぎりだよ」
「本を声に出して読む?音読してみる?」
このくらいで十分です。覚えているかを確かめたり、無理に言い直させたりする必要はありません。親が会話の中で使うことで、子どもの耳に少しずつ言葉がたまっていきます。

日本語を続けていると、将来、日本へ留学する、働く、暮らすという道を考えられるかもしれません。日本語を使う仕事や、二つの国をつなぐ活動に興味を持つこともあるでしょう。
もちろん、日本語を続けたからといって、必ず日本に関わる仕事をするわけではありません。それでいいのです。
大切なのは、子どもが大人になって「やってみたい」と思ったとき、選べる道が残っていること。日本語は、未来を決めるものではなく、未来の選択肢をそっと増やしてくれるものだと思います。
5.漢字を書く前にできること
会話の中で言葉に出会っていると、漢字を学ぶとき、「初めて見る知らない言葉」ではなく、「聞いたことのある言葉を、漢字で確かめる学習」に変わります。
漢字の壁を越えるために、最初からたくさん書かせなくても大丈夫。まずは、日々の会話の中で言葉に出会うこと。
毎日の会話で育った語彙力が、
子どもの漢字学習を支える力になります。
今日から、いつもの言葉に別の言い方を一つだけ添えてみませんか?
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次回予告
| 漢字につながる言葉を、家庭の会話にどう取り入れる? というテーマでお届けします。 |

語彙力と漢字のつながりを、家庭でできる具体的な工夫とともにお伝えします。
このコラムが、おうち日本語に悩むご家庭の「今日からやってみよう」のきっかけになればうれしいです。
それでは、また次回お会いしましょう。
ルーツとしての日本語で、子どもの未来と家族をあたたかく。
理恵

著者プロフィール
理恵|継承語教育アドバイザー
カナダ在住17年、2児の母。元小学校教師として11年間勤務し、現在は補習授業校教師として子どもたちに日本語を教えている。
継承語教育を専門的に学び、継承語教育アドバイザー・幼児日本語教師として、海外で子育てをする家庭に向けて、おうちで無理なく日本語を続ける方法や、10代まで見据えた継承語教育について発信している。
「子どもの未来とルーツが豊かになる日本語教室 りんごっこサークル」を主宰。
ルーツとしての日本語で、子どもの未来と家族をあたたかく。
Instagram:@rie.ouchi.nihongo
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