第8回 ルーツとしての日本語が子どもの感性と多言語の力を育てる

こんにちは。

カナダ在住17年、2児の母。日本で小学校教師として11年間勤務し、現在は補習授業校教師、継承語教育アドバイザーとして活動している理恵です。

このコラムでは、「子どもに日本語を続けてほしい。でも、親子バトルにはしたくない」そんな海外子育て中のご家庭に向けて、細く、長く、日本語が続いていく「おうち日本語」の考え方と、毎日の暮らしの中で実践できるヒントをお届けしています。

前回は、「漢字につながる言葉を、家庭の会話にどう取り入れる?」というお話をお届けしました。今回は、「おうち日本語を続けるための7つの土台」の最後。日本語と、子どもが日々使う言葉や文化が出会うことで、どんなふうに見える世界が広がるのかを考えます。

同じ出来事を、二つの言葉で話してみる

たとえば、学校から帰った子どもが「今日は楽しかった」と言ったとき。「何が楽しかったの?」と聞いてみる。友だちとの遊びを話し始めたら、「悔しかった?」「ほっとした?」と、日本語の言葉を一つ添えてみる。
一日の出来事は同じでも、使う言葉が増えると、気持ちや場面をもう少し細かく思い出せます。現地語で話した出来事を、家では日本語で話してもいい。子どもが現地語を交えて返しても、その先の話を一緒に楽しめたら十分です。
日本語だけで最後まで話すことをゴールにしなくても、親子の会話の中に日本語を置いておけます。

文化は、説明よりも暮らしの中で伝わる

ご飯を食べながら「いただきます」と言う。季節の行事について「ママが子どもの頃はね」と話す。日本を訪れたときの匂いや音を思い出して、「どんな感じだった?」と聞いてみる。
こうした会話には、言葉の意味だけでは収まらない、家族の記憶や気持ちが入っています。子どもは、今暮らしている場所の習慣を知りながら、日本につながる家族の習慣にも触れられます。どちらも、自分の暮らしの一部です。
「日本ではこう、ここではこう」と違いを見つけて話す時間が、子どもにとって新しい発見になることもあります。

言葉への好奇心を育てる

日本語を使っているから、ほかの言語も必ず上達する。そう言い切ることはできません。子どもによって、興味も学び方も違います。
それでも、二つの言葉を行き来する暮らしには、「この気持ちは、別の言葉では何と言うの?」「同じ意味だと思ったけれど、少し違うね」と気づく機会があります。そんな小さな発見が、ほかの言葉や文化にも目を向けるきっかけになるかもしれません。
たとえば「もったいない」を子どもと話題にしたら、いつ使うのか、現地語ならどう説明するのかを一緒に考えてみる。正解探しより、言葉を比べて面白がる時間を大切にしたいですね。

今日できることは、一つの質問から

今週は、お子さんにこんなふうに聞いてみませんか。
「今日、心に残ったことは何?」
返ってきた言葉を受け止めて、「どんな気持ちだった?」と一つだけ続ける。日本語と現地語が混ざっても大丈夫。親も自分の思い出を話してみると、会話は自然に広がります。
日本語を続けることは、語彙を増やすためだけではありません。子どもが自分の気持ちを表し、家族の物語を知り、いくつもの見方に出会うための時間でもあります。
7つの土台を一度に実践する必要はありません。今日できそうなことを一つ。親子に合う形で、これからも続けていきましょう。


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それでは、また次回お会いしましょう。
ルーツとしての日本語で、子どもの未来と家族をあたたかく。

理恵

著者プロフィール

理恵|継承語教育アドバイザー
カナダ在住17年、2児の母。元小学校教師として11年間勤務し、現在は補習授業校教師として子どもたちに日本語を教えている。
継承語教育を専門的に学び、継承語教育アドバイザー・幼児日本語教師として、海外で子育てをする家庭に向けて、おうちで無理なく日本語を続ける方法や、10代まで見据えた継承語教育について発信している。
「子どもの未来とルーツが豊かになる日本語教室 りんごっこサークル」を主宰。

ルーツとしての日本語で、子どもの未来と家族をあたたかく。
Instagram:@rie.ouchi.nihongo

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